アラスカガイド・フェアバンクス編1

2008 / 3 / 25

フェアバンクスは昨年よりもずいぶんと寒さがゆるいような気がした。
そうは言ってもマイナス20度は普通だし、内陸のフォックスのスキー場やチェナホットスプリングではマイナス30度も軽く超える。それでも、初めて訪れるお客様にはなんとも優しくありがたかった。

夕方6時にはフェアバンクス空港に到着、レンタカーを手配して、無事に荷物を全員受け取りダウンタウンへ出発。アラスカでは3月でも夜8時半から9 時にならないと暗くならない。なんだか得した気分だ。もちろん朝も7時ではまだ真っ暗なのだが。
フェアバンクスでは「タウンサイトガーデン」という、ロブとかずみさんの切り盛りする快適なB&Bにチェックイン。早々に防寒装備をして郊外のオーロラ観測ポイントへ。少し車を走らせ郊外に出ると、対向車もほとんどないローカルな道を快適に走ることができる。もちろん冬道だが私は北海道生まれのガイドなので問題なし。山を越えながら日本人の若いご夫婦、熊谷さんが頑張っている「オーロラボラリスロッジ」へ向かう。

ここで素敵な出会いがあった。
熊谷さんの奥さんが臨月で、日本から彼女のご両親がお手伝いにいらしていて、しばしお話する機会があり、すっかりお母さんと盛り上がってしまったので ある。その話のなかにアイヌの話がでて、お母さんが今日フェアバンクスのアラスカ大学博物館のアイヌ特別展に足を運び、素晴らしい作品に出会い感動したという 話をはじめた。アイヌ作家の熊の木彫りと聞いて私も何か感じるものがあって、それは藤戸竹喜氏の作品ではないですかと言うとお母さんがびっくり。あら!どう して!そうその方の作品ですと。藤戸氏は私が20代の頃からオートバイ繋がりで親しく家族ぐるみでお付き合いさせていただいている、北海道、いや日本を代表する阿寒湖在住の素晴らしいアーティスト。5年ほど前も、ご縁あって一緒にアラスカのケチカンに招待してもらっていた。本当に魂の出会いとは、理屈では考えられない。遠きアラスカの地に来て感じる魂の繋がりに心が熱くなった。

時間を忘れながら皆で熱く語り合っていた頃、やはりオーロラは我々に静かなプロローグを見せてくれた。

まるで美しいグリーンのスカーフが写真にはっきり写りこむ。他の見学者も興奮しながらばたばたしているなか、静かにオーロラの序章が始まる。これか ら始まるアラスカの旅を、素敵な太陽からのギフトで祝ってもらったようだ。

翌日は時差や疲労を調整しながら、昼から「アラスカ大学博物館」へ向かう。朝からベニヒワ(フェアバンクスの冬の象徴)やワタリガラスの声や姿に感動しながら車を走らせる。
アラスカ大学の博物館は、単なる研究機関ではなく、アーティスティックな美術館的要素もしっかり持った素敵な空間である。今回はアイヌ民族の特別展 も含めて一同3時間以上の滞在となる。私はベーリングブリッジ(かつてシベリアとアラスカがオーストラリア級の広大な「橋」で繋がっていたこと)の歴史や意義 に深く興味を持ったほか、展示絵画で、2人の男女が丘のようなところで広大に広がるアラスカの大地を見つめる作品に心を打たれた。自然と人の本来のバイブレーション、共鳴し、奏でていける関係。またゴールドラッシュの興味深い話も沢山あった。

一同博物館から出ると、アーチ状の高い屋根に沿って、2羽のワタリガラスがきりもみ状態でもつれながら空を駆け上がっていくのに出会う。まるで愛情表現をしてるかのように。

夕方、まだ明るいが、アラスカの書籍を専門に扱う「ガリバーブックス」や、ジュエリー店を楽しみながら夕食へと向かう。今夜はフェアバンクス1番と唄われるステーキハウス「タートルクラブ」でのディナー。そこはまるで絵に描いたような、アラスカらしい山の中にぽつんとたたずむ建物。しかし広い駐 車場は満杯。さっそくサラダバーから一同美味しい!を連発しながらステーキを待つ。そして最初のステーキが運ばれるや皆深くため息。あまりの大きさと厚みにびっくり。もちろん1番小さなオーダー。
しかし全員のステーキが揃い、皆一口食べるとうわぁ!美味しい!何これ!すごい美味しい、を繰り返しながら、どんどん巨大ステーキがたいらげられてい く。フェアバンクスの人達はこの店で誕生日を祝ってもらうのが人気らしく、その日も4組がハッピーバースディを唄われていた。300グラム以上のプライムリブステーキが2000円弱で食べられ、しかも残すと持ち帰っていいのは最高のサービスだと思う。しかも、BGMもステーキ同様控えめでなくボリューム満点で、カ ントリーやカントリーロックが流れる。ウェイトレスのホスピタリティも文句なし。一同大満足でタートルクラブをあとにしてオーロラ観測へ。

この日は気温がどんどん下がり、夜中の2時ころにはマイナス25度。それでも車で暖をとりながらオーロラを待つ。満月が素晴らしく、誰もいない、音もない、月明かりに照らされた森を皆で歩いてみる。私は満月を見ながら雪のうえに寝転んでみた。皆もそれぞれ寝転んでいる。1分だけ衣擦れの音もださないように静かにしようと提案して、しばし1分。

1分が永遠に感じる月夜だった。

ホワイトスプルースの森には今しがた通ったばかりのウサギの足跡や、ムース、キツネ、コヨーテやオオカミも?クズリやリンクス(山猫)もいるのだろうか?

雪がちらついてきたので午前3時に山を少し車で降りる。
中腹の駐車スペースでは雪がなかった。すると向こうの山から1本の光の柱がでている。オーロラだ!慌てて写真を写してみる。やはりはっきりオーロ ラが映っている!そうしているうちに2本目の柱が出て今度は赤やオレンジの光がでてきた。他に見ている人はいない。我々だけで1時間オーロラを楽しんだ。午前4時半にオーロラが薄れ帰路へ。

なんだかやはり予感がして、真っ暗な道をチェックしていると、やはりいたムース!大きい!すごい!私も思わず叫んで皆を驚かせる。
しばしムースを道脇から眺めて長い2日目が終わった。宿に着いて眠ったのは5時半頃だった。

3日目フェアバンクスからチェナホットスプリングスへ続く。


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