人を信じること

2009 / 3 / 16

今から10年ほど前に私は長年お世話になった学習塾の講師をやめて現在の宿泊施設ヒッコリーウィンドを立ち上げるべく動いた。

ところが内定をもらっていた金融機関から突然の内定取り消し。まるで最近の出来事のようだ。当時の私はまさに退職届けを済ませた状態で家族を抱えて路頭に迷う状態。ダメもとで事業計画書を持って市内の銀行を回り始めた。

結果はどこも融資担当者は
「夢があって素敵ですね、担保はありますか?なければ自己資金をまずは充分用意して事業をしてください。」
皆10分程度の同内容の面接となる。8件の銀行を回ってもうダメだと思いながらも家族等のことを考えたらまた次の銀行に行ってみるしかなかった。

一番イメージ的に難しいと最初からあきらめていた釧路信金を訪ねた。すっかりパターン化した私の事業の説明に初めて真剣に耳を傾けてくれた人が現れた。しかも事業計画書を見て読ませてほしいとまで。これだけでも本当に嬉しかった。そして計画書を読むので後日また来てほしいとのこと。初めて真剣に銀行の人に話を聞いてもらえたのである。少しだけ希望と勇気が出てきた。その当時の融資担当だった人が釧路信金本店の小林氏だった。

数日後丁寧に事業計画について質問され貴重なアドバイスをたくさんいただいた。わらにもすがる思いで小林氏の指示を丁寧にクリアできるように頑張ってみる。なにせ社会に出てサラリーマンしかやっていない私。経営はもちろん資金計画や事業についてまったくの無知。怖いもの知らずもいいところだ。それをきちんとひとつひとつ教えてもらう。最終的に事業を行う最低限の資金繰りを今では考えられない良い条件で用意してもらうことができた。

私の人生では銀行ほど人間味が少なく無機質なイメージのところはなかったのだがイメージは一変した。まさに銀行は人なのだ。そして信用金庫の信用を人間性の価値で評価してもらえたこと。ありがたいというより奇跡だ。

興味もなく強いていえば苦手な銀行に通うようになり小林氏筆頭に釧路信金の歴代融資担当者にお世話になっている。そして小林氏が定年を迎え今年限りで退職され新しい人生を歩きたいという話を先日ご本人からも伺った。自分たちのこの10年目の節目にヒッコリーウィンドもカフェなどを新たに建物と立ち上げ頑張っていく矢先。本当にお世話になってきたありがたさが心にしみた。

信用金庫と小林氏との出会いなくしては今の自分たちはないのだ。地域に根ざした信用金庫にお世話になるということは私も地域の力や元気になるような事業を進めたい。地域や社会にやる気や幸せの還元ができるように。そしてそれが何よりの私を信じて今日までサポートしてくれた小林氏や関係者の皆さんへの感謝のしるしだと思う。

人と人の出会いの素晴らしさや奇跡はこんなかたちでも存在するのである。私が10年前開業を決意したときも不況と言われていた。さらに深刻と言われる今こそ出会いの奇跡や素晴らしさを心に信じて頑張るときだ。

人を信じること、信じてもらったらそれに応えること。


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