星のカヌーガイドのシーズンがピークになってきている。
今は夕暮れから舞うヘイケボタルが水面に映りながら飛んでいく姿や、エゾフクロウの声が楽しめる。
先日は、あいにくの曇り空でのカヌーガイドだった。
しかしそんななか、曇り空がどんどん開けていき、雄阿寒岳の頭上に北斗七星が輝いた。
まるで奇跡のようだと、お客さんらと夜空に輝く北斗七星を眺めていたら、まだ少し残っていた雲の中で稲光が輝いた。
空は晴れているのに雷が光りはじめたのだ。
何年もガイドしているが、稲光に水面が輝く経験は初めて。
あわてて撮影のセッティングをした。
実際に雷を捉えられるかも半信半疑だったが、やるしかないと思った。
限られたセッティングでわずかな時間の露光。
ところがやはり奇跡は起きた。
雲の中から現れた稲妻は、カヌーと水面を照らし矢のように真っ青な夜空を駆ける。
そのあいだにもヘイケボタルが点滅しながら、水面に淡い光を反射させながら、飛んでいく。
祈るような気持ちでシャッターを切っていく。
写った!
雲は小さな女の子のような天使、そして稲光はまるで雄阿寒に届ける光の矢のようだ。
考え方を変えれば雄阿寒岳から天使に与えられたカムイの矢、とも受け取れる。
いずれにせよ神々しい光を見た。
お客さんはこの3月に若い娘さんを旅立たせたお母さんとお姉さんとその息子。
お母さんはこの光に何を感じたのだろうか?
燦然と夜空に輝く北斗七星。
ホタルの光。
真の静寂の世界。
写真に捉えられたのも奇跡のような体験だが、自然の物語はこんな風に、日々我々に深い感動や元気、勇気を与えてくれる。
雄阿寒岳にカムイの矢を届ける天使
2012 / 8 / 14