恩師と大樹

2010 / 6 / 19

九州産業大学の博士である伊藤重行氏がヒッコリーに遊びに来てくれた。
8年ほど前だろうか、ヒッコリーウィンドにヒグマが現れたことを地元新聞のエッセーに書いていたらその記事を読んで訪ねていただいた。
湿原の哲人、長谷川光二氏の教え子であり、彼の伝記の執筆もされている伊藤氏。
経済学から語学、政治理論哲学まで幅広い学問。
鶴居村で幼年期から少年期をすごし、今もみずから鶴居を「天国のような故郷」と言われている。
故郷を誇りに思い、純粋さを今なお失わずに歩みつづけている人。
私にとってもかけがえのない師である。
惜しみない協力や励ましを、いつも最大限に受けていると思う。

そんな伊藤氏が現れた夜に、ふと、彼がいつも雄阿寒岳や鶴居が私の力の源だという言葉を思い出した。
外を見上げると素敵な星空だ。
これは些細だが、彼 にちょっとした恩返しができるかもしれないと思い、鶴居での撮影を申し出てみた。
先生!今から鶴居で写真を撮りませんか?

快く撮影を承諾していただき、さっそく雄阿寒の見えるところに移動。
そのときなんとなく、ミズナラの大樹と伊藤氏が重なり、写真のイメージがなんとなくできてきた。
暗がりのなか手探りと勘で構図を決めて撮影開始。
伊藤氏はこんな暗闇でどうやって写真?と半信半疑。
それでも何枚かイメージの写真を写すことができた。

それは鶴居村を見下ろす丘に、知とたくましさをしっかりと根に張り、天に向かって自らの枝を広げるミズナラ大樹。
遠くには雄阿寒のシルエット。
鶴居の街の明りが静かに大樹の前にたたずむ伊藤氏を照らしている。
何もかも自然に伊藤氏の人生と鶴居を闇に浮き上がらせていた。
闇と星がロマンティックに情景を際立たせている。

出来上がってきたサンプルの写真を不思議そうに見る伊藤氏。
先生の生き方そのものが、風景いや物語として写し込めたような気がする。
鶴居村で写すことにも大きな意味があった。
写真とこのように関われることこそ本望だ。
そして伊藤氏のような恩師と出会え、このように素晴らしい生きざまを実際に見せていただけることも幸せに思う。
写させていただいた写真を眺めながらそんな風に思いを巡らせるのであった。


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