ヒグマに威嚇される

2007 / 9 / 5

ヒグマのいる川1ばたばたしてるうちに9月。8月の最後のカヌーツアー中の出来事。 釧路湿原に限らず、北海道でならどこでもクマに遭遇する可能性がある、という前提でガイドをしている。人が普段入らない森や川は特に注意が必要である。森や湿原のガイドではもちろんだが、カヌーガイド中にもクマの痕跡や足跡を普段からよく見る。

今回は出艇してから数分でクマの足跡を発見。
ヒグマの足跡しかも前日に友人のガイドが偵察に1人で下っているときに、なんと昼寝のクマを見ている。かなりクマの出没色が濃い状況だ。
そんななか前の2艇のカヌーが何事もなく川を下っていくなか、突然私の艇の横の土手から
「ぐぉっ、ぐぉっ、ぐるぅ、ごぉー」
という、いまだかつて聞いたことのない重低音のうなり声。女性2名のお客さんが
「安藤さん、こここれって何の声でですかぁ」
とすでに顔色を失っている。私も正直ヒグマの至近距離での威嚇音は初めてだったのだが、藪にちらっと動いた黒いかたまりで確信。満面の笑顔で
「大丈夫です、クマです!」
となんともわけのわからない応対。合図で前のカヌーが戻ってきた。
「そのカーブでしょう?さっきすごい匂ったんだ。やっぱりクマか?」
と友人のガイドがすかさず言う。

少し戻って見たい気持ちがあった。しかしそのとき頭によぎったクマの気持ち。 前を行く2艇のカヌーと人に、昼寝か食事か、くつろぎをじゃまされ、恐ろしい人間の気配 にじっとやぶで我慢。しかし最後の3艇目(私の艇)が知らずに潜んでいる岸側に近づき、彼(いや彼女か?)の恐怖は、我慢する限界を超えてしまった。
「頼むから、お願いだから、こっちへ来ないで!」
とやむにやまれずうなってしまったこと。クマの我慢した恐怖は並ではなかったはず。 ここは普段そんなに人が行き来するところではないのだから。
私はクマがうなっていた恐怖より、クマが我々を怖がってあんな声をだしたことをお客さんたちに伝えたかった。そのことを説明してその場を皆で立ち去った。 自然のバランスがもっともとれた状態のシンボル、キムンカムイ【アイヌ語でヒグマのこと。「山の神」の意味】がいる森や川がどれほど貴重で、守らなければならないのか。彼らも平和に暮らしたいのは我々以上のはず。
足跡からおそらくまだ、3~4歳の若クマだと思う。怖い思いをさせてごめんなさい。 ヒグマの暮らす湿原の川は、カラフトマスが時々はねるなか、河畔林を早くも色づかせゆっくりと輝きながら流れていた。
ヒグマのいる川2


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