タンチョウ子育て

2010 / 5 / 19

今年は昨年より、湿原全体のタンチョウの子育て開始が早い。昨年6月スタートが今年はほとんど5月の1週目から。ガイド的には新緑のブラインドを考えると有利な条件。6月中旬くらいまでは、可愛い甘えん坊の雛たちや全身全霊で愛情を注ぐタンチョウの親たちをじっくり観察できそうだ。今私が押さえている子育て夫婦は4つがい。うちひと組は兄弟を育てている。

タンチョウの子育てについては、「特別」と言っていいほど、夫婦のタンチョウの深い愛情に心打たれるはずだ。ザリガニを与えるのもわざわざ遠くから運んでくる。それだけではなくザリガニのハサミをちゃんと取りのぞいたり。その愛情のきめ細やかさや丁寧さには、人間も脱帽もの。

子供たちの性格も見ていて面白い。親の先をいくタイプ、絶対に両親の真ん中にいるもの、親が餌をくれるまで保護色エリアでずっと待機する慎重派。もちろん親の性格も最高におもしろい。ひたすら餌を見つけて子供に運ぶお父さん、ひたすら自分で食べるお母さん。遊びにばかり行く父。夫婦で競うように餌を運び、いつも親子ぴったりの仲良し親子。
1度タンチョウの子育てを見だすと、きりがないほどおもしろいのだ。人間臭さというのだろうか?ストレートに伝わってくる親子の愛情には、解説は必要ないかもしれない。

子育てを経験した女性は、特にタンチョウのけなげな愛情に、皆、自分の大変だった子育てを重ねて涙する人も多い。映画やドラマではない、自然のなかの物語。作られた演出をはるかにしのぐ説得力やインパクトがそこにある。タンチョウの子育てガイドのあとの、皆さんの満たされた表情や満足な声は、この時期ならではの、きわめつけの時間だ。

決して甘くない、湿原でくり広げられるタンチョウの子育て。こうして私がキーボードを叩いている今も、タンチョウの親は子を外敵や寒さから命がけで守っている。もしかすると、ハンノキ林の際で優しい月明りに照らされているかもしれない。いや、夜になってしつこいキタキツネや狡猾なミンクたちの光る眼に、前後をしっかりガードしながら警戒の声で鳴き交わしているかも。きっと親たちは寝ずに雛を守っているはずだ。

そんなことを想像したりして彼らの姿を見ると、心からエールを送りたくなる。そして応援しているはずが、気づくとたくさんの元気や、感動を、彼らから与えてもらっている。この雛が飛べるようになるまでの大変な時期の親子を見て、冬に成長して親と一緒の子供たちを見ると、感動も違うはず。素晴らしいタンチョウ親子の子育ては今、始ったばかりだ。


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